第I部・第II部 総括討論
座長:菊池雄一朗(3年生)
報告者:大場彩香・古農幸江(2年生)
コメンテーター:小野舞子(4年生)
<報告者レジュメ:古農幸江>
総括 第二部「もうひとつの地球村」版文化・文明論
総論・「もうひとつの地球村」から見た戦略的文化・文明論
「もうひとつの地球村」を構築していくために、「文化・文明」を見直す。
○情報革命によって出現した「地球村」を支配するもの
・「標準化された文明」
・「根無しの文化」
○「もうひとつの地球村」における文化・文明
・「文化」とは、人と自然環境・社会環境・精神環境との関わりについて、ある
社会集団に属する人々がもっている考えの総体。
・「文明」とは、ある社会集団に属する人々がその「文化」を具現化し、した
がってその「文化」を反映して作り上げた法律、社会制度、技術、建造物、芸
術作品などの総体。
・地域社会の住民が心と文化の関わりについての意識に目覚め、異文化を持った
ほかの社会集団との接触は、自己啓発の過程だとして自らの成長を発展の糧と
するとき「もうひとつの地球村」となり真の意味での「ふるさと」になる。
第7章・「もうひとつの地球村」を目指す法文化
・世界は西洋近代のグローバリゼーションによって同一化されつつあるが、地球村
の司法制度は多元的でなければならない。アフリカの多元的な司法制度から多く
学ぶ必要がある。
○西洋近代:一元的、事後救済、紛争発生の放置、社会秩序・原状回復が目的
○ 日本 :一元的三審制、西洋近代に同化
○アフリカ:多元的(近代的制定法・イスラーム法・伝統的慣習法)、人間関係の
修復や構築が目的、「方向性の差異」がある。
「もうひとつの地球村」を目指す司法のあり方は、他者の差異性、特異性が歓待的
に迎え入れられる多元的な司法制度により、法が自発的に遵守されるもの。自己
と他者との「分離かつ結
合」が重要である。
第8章・カリブ世界に見る「もうひとつの地球村」
「揺れ」:日常と非日常の間の精神の「異化」と「回帰」
カリブの「揺れ」によるカリブ発の新たなる「地球村」を考える。
○カリブの歴史:植民地支配や奴隷制、異人種混交が引き起こした「葛藤」の余
波による様々な「揺れ」。縦と横の社会的、人種的、文化的な離反と融合と繰
り返してきた。
○カーニバル:新たな秩序に基づく近代社会に生きつつも、本来の伝統的価値観
を再認識し表現している。この「揺れ」を通し、より人間らしく生きるために
は近代と伝統のバランスのあり方、異人種・異文化間の摩擦の払拭方法を考え
る。
○グローバリゼーションの波:グローバルな現実的生活環境とローカルな価値観
との間での「揺れ」、つまり「グローバルとローカルの意識の双方向性」こそ
が近代を生きる人間の実存的核となり、またそれが大いにポジティブに働く。
第9章・中世における村落共同体・都市共同体の形成から学ぶもの
・日本の中世における村落共同体
○自主的・自立的政治組織である「惣村組織」
○真宗の浸透によって生まれた自主的・自立的宗教組織である「講組織」
・この二つが、精神的連帯の絆が求められたとき連携関係を結んでいた。
・現状分析に力を発揮する近代社会科学、思想の営為を主体的に学び、地域に根ざ
した文化・宗教における人間開放の核心を主体的に把握し、その両者の融合が必
要。
・住民たちの無数の取り組み、営為から見出される共通項の把握こそ、地域共同体
の紐帯を現代に再生させ、「もうひとつの地球村」建設の鍵になる。
第10章・「もうひとつの地球村」と多文化主義・多言語主義の問題点
「言語ジェノサイド」:言語抹殺。先住民大虐殺とそれに続く黒人奴隷化政策の帰
結。
グローバリゼーションとともに始まる。
多文化主義・多言語主義
カナダ→多文化主義はあくまで「二言語主義」という限定の中での多様性や平
等の追求。
オーストラリア→多文化主義という国家戦略の下で、政治的には断固たる一言
語主義、経済
的、文化的には柔軟な多言語主義。
EU→「多様性の中の統一」をモットーに。言語権は個人権か集団権かで議論さ
れている。
言語政策に関する限り、各国の自主性に任せ、独自の統一的な政策基準・
施策提案など
の方針となるものを示していない。
<コメンテーター・レジュメ:小野舞子>
グアテマラ共和国
○略史
1523年 スペインによる征服
1821年 スペインからの独立
1823年 中米諸州連合結成
1838年 グアテマラ共和国成立
1960年 内戦発生
1986年 民政移管
1996年 内戦終結
2000年 ポルティージョ大統領就任
2004年 ベルシェ大統領就任
・人口は約1263万人(日本の約10分の1)であり、宗教はカトリック(キリ
スト教)。
言語はスペイン語を話す。
○外交方針
*対米関係重視
*台湾、韓国と外交関係あり(中国、北朝鮮と外交関係なし)
*1998年キューバと国交正常化
○経済
*主要産業
・農業(コーヒー、バナナ、砂糖、カルダモン)
・繊維産業
*一人当たりGDP
・2,532米ドル(日本の10分の1)
*主要貿易相手国
・輸出:米国、中米諸国、メキシコ、パナマ
・輸入:米国、中米諸国、メキシコ、日本(日本から輸入しているのは電化製品
など)
*経済状況
・農産品が主となっており、経済がこれら産品の国際価格に依存するために不安
定。要輸出産
業こうした経済構造を改善すべく、政府は加工食品や繊維加工品など非伝統産
品を振興している。
・近年、経済成長率は2〜3%と低水準ではあるが安定的に推移。国民の半数以
上が1日2ドル以下で生活する貧困層と推定されており、貧困問題解決にはよ
り高い経済成長率の達成が必要。国民の約1割(120万人以上)が米国に移住
し、海外送金が貧困地域の家計を支え
る。
〜宗教について〜
○カトリックとプロテスタントの違い
・カトリックでは、司祭や神父といった聖職が、ローマ法王を頂点とし、司教、司祭、信徒
というピラミッド型階層構造になっている。そのため、聖書と並んでローマ法王の教え
などにも権威をおき、古くからの言い伝えや習慣などを重んじる。例えば、マリヤ崇拝
やいろいろな聖人崇拝などがプロテスタントにはないカトリックの特徴である。洗礼を
受けたときにクリスチャンネームをつけるのも、プロテスタントではあまり見られない習
慣である。修道院があるのもカトリックだけ。
・一方、プロテスタントは「聖書のみ」に従う。そのため、ローマ法王のような権威は認め
ず、階層構造を持つ組織もない。このことが一因となって、プロテスタント内にさまざま
な宗派(教派)を生み出している。プロテスタントには、教理のどの面を強調するかと
か、どういう方法で洗礼をするかなどで、多くの教派が存在する。でも、互いに認め
あっている。
・もっと簡単には、十字架を見たときに、イエス・キリストがはりつけにされているのがカトリッ
ク、ただの十字架がプロテスタントである。それから、「アーメン」と言うときに十字を切る
のがカトリック。また、カトリックでは「ミサ」であるが、プロテスタントでは「礼拝」という。
・その内容は、祈りや讃美歌、聖書朗読、説教など。しかし、カトリックのミサではその順序
がしっかり決められているのに対し、プロテスタントでは教会ごとに様々で、雰囲気も厳粛
なところからにぎやかなところまで様々である。カトリックでは、神父(司祭)が煙が出る玉
を振り歩いたり、仰々しくパンをちぎったりと、プロテスタントよりも儀式的に感じることが多
い。一方プロテスタントでは、聖書の御言葉を聞くことが大切にされるので、説教に重きが
おかれている。
○国旗(※1)
・青は太平洋とカリブ海、白は平和の願いを象徴する。紋章に描かれた国鳥“ケツァー
ル”は自由のシンボルで、銃剣と刀は勝利を、周りを囲む月桂樹は平和を表わす。中央
には独立を記念して「自由 1821年9月15日」と書かれている。
・石畳に黄色く光る街路灯。まるで映画のセットのような街。80年代の原住民虐殺が
もっともひどかった時期はもう過ぎていたとはいえ、まだゲリラと政府の和解は成立し
ていなかった。和平条約が結ばれて8年たった現在でも、内戦の傷跡は深く残って
いる。
・500年前に不運にもスペイン人に発見されてしまってから独立まで続いた抑圧、スペ
インからの独立後は、アメリカ政府による陰謀とアメリカ企業による搾取、現在は先進
国からの”援助”という名のもとに行われているグアテマラ人の自立性の破壊と環境破
壊。グアテマラは非常に美しい国である。色とりどりの民族衣装、美しい湖、しかしその
華やかさの影に何万という問題を抱え、それらは観光客の目から意図的に隠されようと
している。
○樹海に浮かぶティカル遺跡(※2)
・グアテマラ北部のジャングルにあるティカルは、マヤ文明最大の神殿として知られて
いる。20〜30mにもなるジャングルのさらに上にそびえ立つ神殿群を見ると、マヤ文
明の偉大さと神秘性を感じることができる。
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