総括:成長の限界 人類の選択
座長:藤巻 伸悟(3年生)
報告者:尾崎 弘之・渡邊 慶人(2年生)
コメンテーター:内田 将士・松平 香世紀(4年生)
<報告者レジュメ:尾崎 弘之>
★総括★
・序文…ここでは、以前に出版された『成長の限界』、『限界を超えて』の2冊の本でどのようなことが
書かれていかたが改めて述べられている。1章で述べられる行き過ぎへの橋渡し的な内容が
書かれている。
・1章…この章では、人類の行き過ぎについて人口、工業生産、二酸化炭素量など具体例を用いて述
べられ、その要因が3つ挙げられている。そして、第2章から第8章までの各章の大まかな
中心テーマが書かれている。
・ 2章…1章にあった行き過ぎの原因の1つにあった「変化」について述べられた章。人口、食糧生産
など具体例を挙げながら、幾何級数的成長のシステムや原因について論じている。
・ 3章…この章では、成長によって生まれた新たな問題、供給源と吸収源の問題について述べられて
いる。つまり人間が地球の生産能力や吸収能力を超えてしまったということである。その例と
して、食糧、土壌、水、森林などが挙げられている。
・ 4章…本章では、ワールド3を用いて現在わかっている数値から考えられる未来をコンピューターで
予想し、様々なシュミレーションをしている。シナリオ0,1,2では、想定は違うけれども
すべて「行き過て崩壊」という結論をだしている。
<まとめ>
この本全体を通して、今まで知らなかった環境についての知識を学ぶことができた。この本自体の
内容を見たときにすばらしい本だったということはできないが、この本を通した議論であったり、個人
個人調べた内容などはこの本を選んでなければ学べなかったことである。前期を通して学んだ内容
をさらに深めて後期の本に望みたい。
<報告者レジュメ:渡邊 慶人>
総括後編
第5章:オゾン層の物語に学ぶ限界を超えてから引き返す知恵
オゾン層の破壊
・CFCへの過度な期待によってオゾン層に対する対応が遅れ、オゾンホールの
発見が遅れた
オゾン層を守れ
・モントリオール議定書に代表される条約により、未来に向けて具体的な目標が
立てられた。
解決策
1、節約を通じてCFCの必要性そのものを減らす
2、新たな物質が発見されるまでHCFC(代替物質)を使う
3、新たな物質への切り替え
まとめ
・オゾン層の破壊に対して我々は具体的な解決策をつくることに成功した。
これには我々が「行き過ぎ」に対応できる可能性があることを示している。
第6章:技術と市場は行き過ぎに対応できるのか
[行き過ぎ]に対応できる技術とは
・遅れず、コストもかからず、限界もなく、自動的に機能する、望ましい結果
を生み出す技術である。しかし現実にはこのような技術は存在しない。あく
まで理想である。
シナリオから何を学ぶか
・シナリオはあくまでモデルであり、「非現実」である。不確実ナシュミレー
ションの中から我々は何を汲み取るべきか。
教訓
1、一つの限界を取り除いても、すぐに他の限界にぶつかってしまう。
2、限界を先送りすればいつか複数の限界に同時にぶつかる。
まとめ
モデルと現実には大きなずれがあり、モデルそのものを信じてはならない。
我々はそのモデルの中から我々の理想の世界を知り、また「教訓」を学ぶこと
が必要である。
第7章:持続可能なシステムへ思考と行動をどう変えるか
持続可能な社会とは
1、世代を越え、持続できる社会
2、将来の世代がニーズを満たす能力を持ち、現世代のニーズも同時に満たす社会
3、人口と資本の幾何的級数成長を抑制するバランスメカニズムを持つ社会
人口増加のシュミュレーション シナリオ9
・世界が人口と工業生産を安定させるという目標を取り入れ、かつ、汚染、
資源、農業に関する技術を加えた社会。このシナリオが実現すれば持続
可能な社会をつくる事が出来る。
持続可能な社会をつくるための目標
1、再生不可能な消費の現象
2、再生可能な資源の衰退を防止
3、資源の効率的な使い方
4、幾何的級数成長の抑制、防止
5、貧困の根絶
6、失業の廃止
7、満たされない非物質的ニーズ
まとめ
持続可能な社会とは何かを明確にし、そのうえで持続可能な社会をつくるにはどの
ような目標、行動が必要かをシュミュレーションから読み取り、具体的な方法を導
き出す。
第8章:いま、私たちができること持続可能性への5つのツール
次なる革命
・農業革命、産業革命につづく新たな革命、持続可能性革命が期待される。その
鍵を握るのが情報、そして革新者の存在である。我々が目指すのは、変革に抵
抗するであろう今現在のシステムを平和的に再構築する事である。
5つのツール
1、ビジョンを描くこと
2、ネットワークをつくること
3、真実を語ること
4、学ぶこと
5、慈しむこと
まとめ
持続可能性社会をつくるには我々一人一人の意識変革が必要である。そのため
に5つのツールが導き出された。我々は何を考えるべきなのか。
<コメンテーターレジュメ:内田 将士>
貧困問題と環境問題の関わり
●2002年8月にヨハネスブルグで「持続可能な開発に関する世界首脳会議」が開かれた。この会議
は「環境・開発サミット」とも言われていて、環境と開発の問題を統合的に捉えている。また環境
教育と開発教育とを同時に推進する必要性が訴えられている。
・開発途上国が抱えている3つの環境問題。
@途上国固有の環境問題であり、貧困に起因する人口問題、その結果としての森林伐採や過放
牧、そして砂漠化などの問題。
A先進工業国が原因となる収奪型の環境破壊。商業的な木材の大量伐採による森林破壊や廃棄
物の国際移動など。
B先進国後追い型の環境問題。急速な工業化、都市化の結果としての公害問題やスラムの問題。
●いずれも開発と環境とが密接にかかわる課題であるが、@の問題は「貧困の悪循環」を招いている。
すなわち貧困が人口増を招き、環境破壊が進み生活が脅かされる、その結果さらに貧困を促進する
という構図である。しかも問題なのはこの約60億の人口の5分の1以上は、日常の生活のニーズ(衣
食住・教育・医療など)を充たせないほどの「貧困」の状態にあることである。「貧乏人の子だく
さん」という言い方があるように、貧困から脱却しない限り人口は増えつづける。そして貧困問題
を解決するには一定限度の「開発」が必要なのである。その際に求められる開発は、生態系を維
持することができる「持続可能な開発」であり、人間の福利更生を促し、人々が開発の主人公
である「参加型開発」「人間開発」でなければならない。
●地球環境を守るために途上国は人口を減らしてください、といくら先進国側が主張しても説得力に欠
ける。なぜなら一人当りに換算して、日本はインドの約14倍、アメリカは30倍以上のエネルギーを
使っているのである。インドから言えば「インド人30人減らすよりアメリカ人1人を減らした方が
地球環境によいでしょう」ということになる。地球環境のためには南北問題の解決と、先進国の
過剰開発、過剰消費についての真剣な反省と行動とが不可欠である。
●私たちは「人口」「貧困」「環境」という相互に密接に関連した問題に陥っていて、これらを同時に
解決する必要に迫られている。したがって地球環境を守るための「持続可能な開発のための教育」
には、人口・貧困・開発問題を扱う開発教育と、地球と地域の環境を守る環境教育の内容が同
時に含まれてなければならないのである。
「持続可能な開発のための教育」の考え方
1.環境教育、開発教育、人権・平和教育から成り立つ。
2.「共生と公正を基本とした循環型の社会づくり」を目的とした教育学習活動である。
3.「公正」「共生」「循環性」を実現する社会づくりに「参加」することができるような能力や
態度を養うことである。
人口、貧困、環境のジレンマ
●世界の問題状況
・各国内の貧富の格差の拡大、先進諸国と途上国の格差の拡大。
・世界に存在する10数億人の貧困人口。
・地球環境の悪化による貧困、不均衡の悪化。
・人口増加による社会制度、自然環境の悪化。
・世界で1億2千万人いる失業者の存在。
・女性層の貧困と過度の負担。
●現在、未曾有の人口増加、貧困、社会経済上の不平等・不経済な消費が原因で環境状態が悪化してお
り、地球上の新たな脅威の一つとなっている。貧困と人口問題の解決のためには一定程度の
「開発」すなわち貧しい人々の生活向上が不可欠である。(@貧困の根絶、A雇用の拡大、B社会
統合の促進。)
<グリーンベルト運動>
●ケニアの環境活動家、ワンガリ・マータイが環境保護と住民の生活向上を目的に、1977年から非政
府組織(NPO)として始めた運動。先進国のみならず途上国においても、年々進行する地球温暖化や
開発による森林破壊に対する環境保護運動は、身の周りの森林や土壌を守る力として広がってい
る。マータイの始めたグリーンベルト運動はそのなかでも先駆的なもので、ケニアにおける森林破
壊による砂漠化を防止するための植林に、貧困に苦しんでいる女性を動員した。最初は7本の木を植
えることから始まったこの運動は、現在までに3000万本もの木を植えている。
●植林活動に貧困の女性を動員するなかで、彼女たちに資金や技術、教育、家族計画の知識を提供し、
女性たちが何のために生きるのかを考えるきっかけを与えた。この運動はケニア国内にとどまら
ず、タンザニアやウガンダなど約20か国にも広まっている。この運動により、マータイの2004年度
ノーベル平和賞受賞が決定した。環境分野において草の根の植林運動を育てた彼女の功績を評価
し、今回の受賞となった。アフリカ女性としては初めてのノーベル賞受賞である。
<報告者レジュメ:松平 香世紀>
★「人間環境宣言」
・1972年「国連人間環境会議」において、初めて環境問題に積極的に取り組むことが明確にされ「人間環境宣言」がお
こなわれた。この「人間環境宣言」において、人類は地球の管理者であり、人間は健全な環境で一定の生活水準を享受
する基本的な権利を有するとともに、環境の保護し、改善する責任を負うものである、とされ、また、人間の環境の保護・
改善はすべて国の義務であると宣言された。国家の環境に関する権利と責任について、この「人間環境宣言」の原則21
では、各国は、国際法にしたがって自国の天然資源を開発する権利を有するが、同時に、自国の管轄権内または管理下
の活動が、他国の環境または国家管轄権の外にある地域の環境を害することのことないように確保すべき責任を負うとし
ている。この「人間環境宣言」の前後から、国際的環境保護関連の条約の締結が急速に増えている。
*環境問題は、特定の地域に限定した問題でなく、地球的なレベルへの広がりとなり、「現時点の問題」ということでなく、
「次世代のための環境配慮が要求されるという将来を見据えた問題」へと、非常に多様な広がりを示すようになってきてい
る。そのため、対応が遅れるとより深刻化するという点で、人類の生存に関わる問題であるという認識が確認されてきて
いる状況である。
★「東アジア」
1 発展途上国(東アジア)の環境問題の特徴
@産業公害型の環境問題。公害に似た環境被害が多く発生している。特にNIESに代表される国と地域のほとんどに狭
い国土面積、人口過密、急速な工業化と行った共通な工業化といった共通の条件がみられ、都市環境型環境問題、産
業公害の形態がみられる。1990年代、多くの国・地域が有害廃棄物処理場の用地確保に関して、住民の反対を受け
て深刻な社会問題を抱えている。そして、有害破棄物の種類・量は、増えつつあり、最近では、ハイテク産業分野の活
動から排出されるPCB,ダイオキシンなどによる地下水汚染、鉛などの重金属汚染が問題になっている。
A行政面、法制面などで環境問題に対する取り組みが十分に行われなかったこと。すでに環境紛争が社会問題として
各地で発生している。民事裁判として争われる事例も増えている。問題解決のため、有効な行政的取り組み、法的対
応、紛争処理制度の確率、環境意識の向上、環境教育、公害防止のための技術開発などの諸政策が必要とされてい
る。
→近年、東アジア地域の一般国民の環境意識の変化、環境に関する法意識の急激な変化がある。そして、この意識
は、事後的な環境紛争の解決よりも予防的な解決を希望するようになった。(1991年中国 社会科院・台湾輔仁大学
院研究所の共同調査の結果)東アジア地域には、環境NGOが重要な役割を果たしている国もある。逆に中国、シンガ
ポールにおいては、政府主導による問題解決の方法がより重要な役割を果たしている。一般の環境意識の向上は、環
境問題を社会問題として認識させ、これを公式的法制度の中に位置づけを促し、法制度を機能化させることにつながる
と思われる。
B越境汚染問題。これまでの越境問題は、国際河川、国際海峡、海洋汚染など主に自然な条件に起因した問題が多かったが、現在では経済活動による人為的な汚染物・廃棄物の移動が問題になっている。廃棄物の国際移動を規制するバーゼル条約が締結されているが、国家間の貿易、援助、海外投資活動、国境を越えた経済活動が東アジアで活性化するに伴い環境問題は多数の国に関わった形で発生することになった。
*中国の酸性雨が韓国、日本にまで被害を及ぼす可能性が認知され、日中間の共同調査、環境調査、環境協力の対象
になった。
2 東アジア地域の環境法の法源の特徴:@憲法 A条約 B法律 C行政機関
@憲法。環境保護に関する憲法上の規定を定める傾向が広まりつつある。環境に関する国民の権利および義務、さら
には国家の環境保護に対する責務内容などを規制する場合が多い。
A条約。条約に関しては2国間または多国間の国際条約が締結されている。これらの条約の形態には、条約、協定、
取極めなどがあり、特にこの2国間で制定された条約には、科学技術協定、環境協力協定、渡り鳥保護に関する条約
がある。多国間の場合には、海洋油濁汚染、原子力、ワシントン条約などの環境関連国際条約が批准または締結され
つつある。
B法律。法律に関しては2つに分けられる。一つは、総合的かつ基本的な性格を持った環境法である。これは、環境に
関する基本原則、環境の個別分野に共通的事項、国などの行政機関の責務、個人の環境に関する権利義務などの
基本的事項を定めているものである。もう一つは、個別的な環境保護・規制に関する法律であり、水質汚染防止法、
大気汚染防止法、産業廃水法、廃棄物に関する法、騒音防止法、自然保護法などが代表例。しかし、被害者救済に
関する法制定の動きはまだみられない。一般的には、民法、刑法、訴訟手続法、森林法、河川法、工場法、労働法な
どの分野にも環境法関連の規定が含まれていることが多い。この意味で各国・地域に共通的な『環境法』の対象領域
をあらかじめ設定するのは困難である。
C行政機関から公布される規制、命令など。行政機関から公布される規制の名称はそれぞれ異なるが、法律の中に
明確な授権根拠規定が示されていることが多い。行政の裁量に基づく改正が比較的容易であるため、排出基準値、
行政機関による規制手段などの技術的内容などが含まれることが多い。
★「EU」
・1972年のパリ首脳会議以来、環境問題に対して非常に関心が高まっていた欧州において、真剣に環境問題に関
心が高まったのはいくつかの環境汚染事故であった。最初にいえるものは、1976年7月に起きた北イタリア、セベ
ソでの化学工場の爆発事故であった。この事故においては、爆発事故によるダイオキシン汚染に関連して、汚染
土壌が行方不明になり、これがあとにフランスで発見されたことから、有害廃棄物の越境移動が問題になった。
その後1986年4月のチェルノブイリ原発事故に続き、11月のスイスのバーゼルでのライン川汚染事故が発生し
たこと、また、先進国で発生した廃棄物が大量に途上国へ輸出され、途上国において環境汚染が生じていること
で有害廃棄物の越境移動が世界的な問題となったことなどを踏まえ、環境汚染問題に対処するには一国だけで
は不可能であり、国境を越えた広範囲な規模での対応が必要であることが認識されるようになった。
1 EUの環境政策の目標
@環境の質の保全、保護および改善。A人間の健康の保全。B天然資源の慎重かつ合理的な利用。
C国際レベルでの地域的または世界的環境問題を処理するための手段の促進
2 環境政策の4つの基本原則
@予防原則:この予防原則は、十分な科学的根拠がない場合であっても、特定の状況、製品および人間の健康に
重大な損失を与えているような兆候がある場合には、立法措置をとることが適切である。
A事前防止原則:この原則の背景には、発生した被害を事後に除去するよりは、汚染の発生を未然に防止する手段を
あらかじめとっておく方が、通常は費用の負担が少ないというものであり、効率的な環境戦略を可能にする。
B発生源での対応原則:廃棄物は、汚染が多くの地域に広がるのを防止できるということからも、それが発生した場
所に最も近いところで処理されるべきだという原則。
C汚染者負担原則:汚染に責任を有するものが、汚染の除去と削減および汚染の未然防止の費用を負担すべきであ
るという原則である。
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