総括:内発的発展と教育
―人間主体の社会変革とNGOの地平―
座長:久保 陽(4年生)
報告者:藤巻 伸悟(3年生)
コメンテーター:渡邊 慶人・佐野 準(2年生)
<報告者レジュメ:藤巻 伸悟>--------------------------------------------------------
序章 21世紀における教育の発展
・この章では変化・現状・課題、本書の目的と構成が大まかに書いてある。
「内発的発展」
●近代主義によって推し進められてきた「開発」に対置されるべき多様なオルタナティブ
思想。
●人間の解放と全般的な発展に基づいた思想。
●経済的、文化的、社会的にバランスの取れた社会を目指す思想。(地域に根ざしたもの
であり、文化の尊重と積極的な交流をも行う開放性を有する)
●豊かな人間性を育てる教育によって支えられ、「南」の自立だけでなく「北」の変革を
促す基盤を作る。
第I部 世界の教育実現
●第1章のアジアの人々と教育(1)では政治・宗教・戦争が密接に関係した国、アフガ
ニスタンでの伝統的教育と近代教育の葛藤を描写し「近代教育」に向けての課題を論
じている。
●第2章のアジアの人々と教育(2)では現代のグローバリゼーションの嵐に直面してい
る東北タイに焦点を当て、北による強引な開発の推進と中央集権的、画一的な国民化
教育の圧力に対抗するひとつの方法として、「売るための農業」ではなく「生きるた
めの農業」という内発的発展の選択について論じられている。
●第3章のアフリカの人々と教育ではガーナにおける国際NGOが担っている教育開発への
役割、成果、努力について論じられている。教育開発の質を高め、アドボカシーや啓
蒙活動を行い地域とNGOのフィードバックを求めることの必要性を説いている。
●第4章のラテンアメリカの人々と教育ではエクアドルにおける先住民による主体的な2言
語教育の現状と未来について述べられている。先住民の権利、教育に対する闘いは続
く。
第U部 「民」主体の教育への協力―NGO活動を中心として―
●第1章のアメリカのNGOの教育協力では、国際教育協力においてアメリカのNGOは専
門・拡大化している現状と、独自性や住民主体の教育協力の維持について述べられ
ている。
●第2章のヨーロッパNGOの教育協力では、開発教育と教育開発の両面を持ち合わせ、
人々に「意識化」を促進させ、開発という概念の中に教育・生活向上・エンパ
ワーメントを備えることが望ましい。北と南の双方が開発を再構築する上でNGO
は重要な役割を担っている。
●第3章の日本のNGOの教育協力では、日本の教育分野のNGO活動が書かれており、初
等教育、ノンフォーマル教育分野を中心とし地元組織をパートナーとして活動して
いる。自立性、自律性を守り運営面と技術面での強化が重要な課題となっており、
運営面では市民の支持基盤を広げ自己資金の調達が必要であり、技術面ではノウハ
ウの蓄積、形成・実施・評価というプロジェクトサイクルの導入と実践、他の協力
機関とのパートナーシップの構築、現地能力の強化と自立性の促進が挙げられる。
●第4章の日本における開発教育の展開では、欧米、日本におけるNGOによる「南」に
国々での開発教育の軌跡と現状が紹介されている。「教育開発」と「開発教育」は
混同されやすいものだが先進国社会の教育現場や市民活動の中で、開発とこれらを
めぐる諸問題を学習問題として扱っている。
・「教育開発」(education for development)開発における教育分野。発展途上国の教
育の整備・発展を目的として活動。住民主体のその地に根ざした構想・創造が
する内発的契機を望む。
・「開発教育」(development education)「北」の市民を対象に、南北問題などの諸問
題に関して理解を深め、解決のための教育活動。国際理解教育、地球市民教育、
ジェンダー教育など広い視野の教育活動。
第V部 地球に生きる―人間のための教育を求めて―
●第1章の権利と行動の主体としての子どもでは、インドの子ども達がNGO活動を通して
社会変革に主体的に行動していくことと学びの深い関係について述べてある。子ど
もへの信頼、尊重することがエンパワーにつながり社会を変えていく主体となって
いくであろうと述べている。
●第2章の「ジェンダーと開発(GAD)」から見た教育では、単なる男女同等の教育アク
セス、女性の社会的に不利な状況を打破、女性をエンパワーメントさせ内発的発展
の担い手となるためには、これら三つのことを同時に進めなければならない。
●第3章のラテンアメリカにおける民衆教育の歴史と思想では、パウロ・フレイレの提唱
する民衆運動の軌跡について書かれている。民衆を「意識化」させニーズに応えて
いくことにより生活の質を上げていこうということである。
●第4章の民主的教育の理念と実践では、民主的教育は生徒と先生が信頼関係を基に民主
的共同体を築き、生徒の個性と社会性を伸ばすことを目指す共同体であると示唆し
ている。
●第5章の新しい教育開発の可能性では、ホリスティックな教育開発という新しい方向性
をドイツのシュタイナー学校の例をもとに、「知」に傾斜した近代教育のシステム
を見直し、それぞれの国や地域の歴史、文化、伝統に合わせ内発的発展と連動した
形で追求していく重要性を説いている。
<論点>
@本書の最も述べたかったことは何か?
A教育を受ける際に必要となってくるものは何か?
B今までの日本(民主主義のもと)で教育を受けてきた上で、これから教育はどうある
べきか?
CNGOの教育に対する活動とは?
<コメンテーター資料:渡邊 慶人>---------------------------------------------------
日本を含めた主要国の高校進学率比較
高等教育への進学率
○ アメリカ合衆国とイギリスでは,パートタイムによる就学者が多い。
アメリカ合衆国とイギリスでは,パートタイム就学の制度が発達しており,入学該当年齢人口に対するパートタイム進学者の比率は,アメリカ合衆国12.7%(1997年),イギリス39.5%(1995年)にのぼっている。
[パートタイム:国により履修方法・内容が相違するものの,学習以外の活動を行いながら就学する形態のことであり,同じ資格・学位を取る場合,修業年限がフルタイムより長くなるのが通常である。このパートタイム制度により,成人学生の就学が容易になっている。]
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