2004年度夏合宿:グループ討論 多国籍企業反対派レジュメ

     〜多国籍企業(TNC):反対派〜


●メンバー 
   4年:犬飼敏・澤井裕太久保田紋子 
   3年:佐藤章典芹沢静花・宮原真希・本村悠紀
   2年:北野茜笹山優一郎村松愛鈴木孝彦



<立論

 ・多国籍企業の発展途上国の進出によって、過酷な労働や児童労働などの人権侵害、既存の市場経済の崩壊、環境
破壊など、さまざまな問題がある。多国籍企業が発展途上国へ進出する理由は、安くて豊富な労働力、広大な土地、
ゆるい規制緩和、などがある。発展途上国は経済を発展させるために企業の進出を受け入れる代わりに、規制緩和な
どの条件を出さざるを得ない。途上国では人的被害や公害が起こっても、権力が弱いため、敗者とならざるを得ない。
よって、途上国にとって、多国籍企業の進出は、よろこばしいものではない。


実例・実態>

1.  過酷な労働がおこなわれている中国西部のマクドナルド社下請工場の労働条件は、1日約20時間、賃金は時給
 約30円、1日では約600円である。これは最低賃金の200円の7分の1しかなく、さらにここから、食費や寮費も引かれ
てしまうため、実際にもらえる賃金はほとんどない。これは、NIKE・GAP・アディダス・スターバックス・ウォルマートなどで
もおこなわれている。

2.  児童労働の最大の問題は、長時間過酷労働・低賃金はもちろん、働くことによって、学校へ行けなくなり、そのため
識字率が低下し、それがさらに経済発展へ悪影響を及ぼす、という悪循環を生み出している。これら長時間過酷労働、
低賃金、児童労働は、ILO強制労働規定第29条、第105条によって禁止されているが、いずれも無視されている。

  児童労働による学力低下がもたらす経済的影響は大きい。
3.  多国籍企業の進出によって、伝統農業の生産性が低下し、途上国の農産物・穀物の貿易収支が大幅に悪化する
など、既存の市場経済の崩壊、地場産業の崩壊が問題になっている。

 例として、NIKEが進出する際は、その国の工場と契約する形を取るので、その工場では、今まで請け負っていた仕事
を放棄する。この際、解雇が発生する。それから、NIKEと工場の独占的な契約で、大規模な雇用創出となるが、賃金
水準の上昇などによって新たな賃金水準の低い移転先移るので、1国内で長期的な雇用は望めない。結果的には、
NIKEの撤廃で大規模な解雇、失業者の増加へとつながってしまう。

4.  多国籍企業の工場では、有毒な物質や汚染物はほとんど垂れ流し状態であり、環境汚染や公害によって多数の
死亡者を出し、その後の対策も不適切である。

  例として、インドのコカコーラ工場が見境なく地下水を掘ったため、井戸水が干上がり、飲み水と農業水を失った。
また、インドで作られたコーラには、高濃度の残留農薬とリンデンやDDTなどといった殺虫剤成分が検出され、発売が
禁止された。

  また、主に殺虫剤を生産するユニオン・カーバイト社のボパール農薬工場から漏れた猛毒のMIC(イソチアン酸メチ
ル)ガスによって、約2500人の死者と約50万人にのぼる人々が被災するという、世界最悪の化学工場災害であった。
しかしこれらに対して、適切な対策はとられていない。

5 WTOの閣僚会議では、各産業の多国籍企業の代表1人が出席するが、市民代表は1人もいない。WTOの加盟国の
3分の2以上の賛成で、貿易ルールを改正することができ、改正されたルールで、すべての国が拘束される。

  国家間の協定であり、ある国が別の国を告発するという形を取っているが、その告発を後押しするのは特定の法律
を邪魔だと感じる多国籍企業である。

  アメリカのタバコ会社は、貿易協定を利用し、喫煙者を防ぐための法政改革を阻止しようとした。台湾政府がタバコ
の自動販売機、宣伝や販促運動を禁じたとき、アメリカ通商代表が経済制裁をちらつかせ、外国タバコの輸入禁止政
策は撤廃された。韓国も同様の圧力によって10代の男子喫煙者が1.6%から8.7%に上昇した。

                                                           (文責:本村悠紀)