2003年度夏合宿:グループ討論 家庭班レジュメ


◎非行少年のパーソナリティー

 調査によると、非行少年たちは、劣等感を持ち、情緒が不安的で自己統制ができず、外向的で活動的な特性
を持っている。さらに、彼らは、自己中心的で他罰的な傾向があり、協調性や客観性に乏しく、攻撃性や衝動性
が高い。
 ただし、非行少年が全てこのような特徴を持っているわけではありません。これらの調査結果が非行少年への
偏見と差別を高めるために使われてはなりません。ドラえもんに登場するジャイアンは、上に書いたパーソナリ
ティーに近いと思いますが、同時に彼は、結構いいやつですよね。物語のなかでは、ジャイアンは将来経営者と
して成功しています。

◎非行少年のパターン

1.過剰抑圧型(良い子型)
 外見上は問題のない家庭でも、親の養育態度が厳しすぎると、子どもは自分の欲求や感情などの自分の思い
を強く抑圧してしまいます。彼らは表面上は「良い子」ですが、心の中では強い葛藤や緊張を持っています。
 そのために小さな非行を繰り返すこともあります。また非行歴のない少年が、突然重大事件を引き起こすことも
あります。優等生の凶悪犯罪として世間の注目を集めるタイプです。

2.社会化されていない攻撃型(ツッパリ型)
 問題の多い家庭の中で、親に拒否、放任、虐待されて育つと、欲求不満の高い子どもになります。彼らは、攻
撃的で不信感が強く、温かな人間関係を持つことができません。さまざまな非行を繰り返す伝統的なツッパリ型
の非行少年です。
 また、不良グループの中では人間関係を作ることができる「社会化された非行型」もあります。彼らは集団で
非行に走ります。

◎非行少年と家族

・母性的世話の欠如
 乳幼児期に母性的な世話(愛情)を受けることは非常に重要です。人は愛情や承認という土台がなければ、み
ずからの衝動をコントロールすることができません。
 非行少年は、親からの愛を充分に受けなかったために、何才になっても、親の愛を求めてやまないのです。
でも、表面的には求めていないふりをします。
 しかし、このような母親を単純に責めることはできません。母親自身に、乳幼児期の依存欲求が満たされてい
ない(愛されていない)という葛藤があります。そのために、子供を愛することができず、また適切な制限を加え
ことができないのです。
・父性的厳しさの欠如
 溺愛され、がまんするという自己規制の訓練を受けずに成長した少年は、思春期になって悩み始めます。幼いときとは違って親も規制や処罰を加えようとすると、子どもは反発します。親はさらに圧力を強めます。こうして親子関係が悪くなり、非行化することもあります。
 父性的しつけを受けないと、強い自我が育ちません。また本気で叱られないことに不満を感じる場合もあります。愛されていないと感じるのです。子どもは無意識に叱られることを求めて、非行に走ることもあります。

◎戦後からの少年犯罪

@戦後第4のピーク

 警察庁の統計によると、戦後の少年非行はいくつかの山(ピーク)を作りながら推移しているという。
第1のピーク・・・昭和26年
         刑法犯の補導人員は12万6505人。
         終戦直後の混乱や貧困を背景に殺人で補導した少年は443人に上った。
 *背景:戦後の混乱と貧困、自分が生きるため、というやむを得ない事情も少なからずあったと予想できる
第2のピーク・・・1960年安保闘争期〜東京オリンピックの年である昭和39(1964)年
         経済の高度成長期に当たり、この時期の非行は「繁栄の落とし子」と言われ、中流層の非行少
         年が増加。この頃暴走族も現れ、交通関係の事故も増え始めたといわれる。
 *背景:高度成長期の発展の影の部分が顕著に表れてきている。このころから、消費社会の落とし穴にはま
   りつつあるように見える。
第3のピーク・・・昭和40年後半〜58年
          同年に補導した刑法犯の数は26万1634人。中学生は13万1688人で全体の半数を
          占め
たほか、女子の非行も全体の20.8%に及ぶなど大きな社会問題となった。
第4のピーク・・・非行の総量自体は昭和58年以降、63年まで横ばいだったが、その後急激に減少し始め、そ
          の傾向は平成7年まで続いた。8年からは少子化にも関わらず、上昇に転じている。この
          状態
こそが「第4の」ピークになるのでは、と危惧されている。
  最高裁の安久津寛・家庭審議官
  =「特に昭和50年代前半は非行の一般化や低年齢化が進み、動機が単純でスリルを楽しむ遊び型の非行
  が特徴。核家族化に伴い、父親不在で母親が子供に密着した結果、自立性が養われなかったため」

◎戦後の子育ての方針の移り変わり

・思想の変化―日本的全体調和から欧米的個人主義へ―

◎子育てにおける親の態度

・欧米:「子供の自立性を尊重する民主的、協同的な態度」が望ましいとされてきた。
・日本:昭和30年代まで
  「部落、家としての判断、決定を善悪の基準として、それを子供に従わせる態度」が望ましいとされてきた。
   30年代後半からの高度成長期による急速な工業化以降」
 ・村落社会や日本の「家」という概念が崩壊していく
    欧米の「自我の獲得」を基調とする考え方が日本中に普及していったのだが、従来の考えをすべて払拭
   して新しく欧米的に切り替えたり、また従来の考えに固執して欧米的考えを拒むことができなかった
    従来の日本的な共同意識を基調とした「自己決定せず、集団に同調する」子育てと、欧米の自我自立を
   基調とした「自立性を育てる民主的、協同的な態度で子供に接する」子育てが混ざって、「自立性は育た
   ず、子供のなすがままで親がいいなりになる」
  =最近の少年犯罪は、こうした家庭が犯罪者を生み出す温床になっていると考える。

◎家庭の役割

・家庭は親子のふれあいや家族の団欒などを通して基本的な躾や社会のルールを教える場であり、人間形成
が最初に行われる場所でもある。しかし最近では躾や感性を育てるといった本来の目的である教育が手薄にな
り、受験用の勉強や、世間体を気にした習い事などを重視する傾向がある。
・家庭の役割
・休息、安らぎを与える。
・あいさつ、歯磨きなど基本的な生活習慣を身につけさせる。
・他人に対する思いやりや善悪の判断など基本的倫理観を身につけさせる。
・社会的マナーを身につけさせる。
・自制心や自立心を育成する。
・健康で安全な暮らしを保障する。
・これら基本的な躾がされていない子供は、学校へ行っても集団生活のルールが守れず、いわゆる「学級崩壊」
 の状態を作り出してしまう。
・家庭で社会に適応できるよう基礎的な訓練をして、そこから社会(幼稚園や小学校など)へ子供を送り出すの
 が親の務め
・家庭での躾は従って、子供に厳しくするばかりではなく、親自身にとっても厳しいものでなければならない。

◎「躾ができない家庭」

 これら躾のできない親に代わって、学校や地域が躾を行ったとしても、その効果は同じ事を親がやった程のも
のは出ない。なぜなら、「目的の場所に子供を引っ張ってでも連れて行ける」のは、親という立場でしかなしえな
いものだからである。地域や学校はやはり踏み込めない領域があるのだ。子供をしつけるには、まず地域や家
庭でその基盤を整え、子供を育てる者(親)にルール作り、子供に対する接し方、具体的な指導方法を教えてい
く、という地道な方法しかないのだろう。子供は躾られるのを待ってはいないので、どんどん成長していってしま
う。これ以上人間の姿をした「動物」を増やさないように、一刻も早い対処が望まれる。

◎なぜこれほどまでに青少年の非行・犯罪が増えているのだろうか(米国)

 「社会を破壊する最も強力な手段は、その最も根本的な構成要素である『家庭』を破壊することである」
・犯罪のみならず、社会問題のほとんどが「家庭の崩壊」と密接に関わっているという認識が国民の間に広がっ
 ている。
・メリーランド州ボルチモアのカルバート政策研究所
   =「非行化する青少年の圧倒的多数は、崩壊した家庭、あるいは父親不在の家庭である」
・両親の揃った家庭の子供が非行に走る割合が6%であるのに対して、父親不在の家庭ではそれが90%に達
 している
・麻薬治療センターで治療を受ける未成年者の75%が片親家庭の子供であったり、子供のそううつ病の最大の
 原因が「親の離婚」にある

◎問われる夫婦関係(日本)

・相部和男氏(現相部教育研究所所長)
  少年非行の場合、大半はその両親の「夫婦関係」に問題がある
・3歳の長男が昼はほとんど何も話さず、夜中になると何時間も泣きわめいて困っているという母親の場合、話を
 聞いてみると夫との関係が冷めていることが分かった。その母親に夫に甘えるように勧めたところ、夫婦の関
 係が良くなり、それとともに長男の状態もみるみる良くなっていったという。
・昨年暮れ、北海道で32歳の主婦が、5歳の長男ら3人の自分の子供を含む10数人にシンナーを吸引させてい
 た容疑で逮捕さた。この主婦は動機について、「夫が留守がちで家庭生活に不満があった」と供述している。
・昨年の日本の離婚件数は過去最高の22万5000件に達している。 

                                                   (文責:3年 原田 夏子)


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