フィリピン調査旅行記

W12 飯沼 美和
W12 大嶺 ちひろ


*目的: マスコバド糖の生産地フィリピンの<ネグロス島を訪れる
*期間: 2003年10月26日(日)〜31日(金) 5泊6日
*費用: HISツアー代金:57800円(航空費・宿泊費・朝食・オプション3つ付き)
       成田空港使用料:2040円・現地での諸経費:30000円  計 約90000円

*日程

[26日] 14:25 成田空港発 (フィリピン航空にて)
          機内食→チキンカレー、ピンク色のそば、パン、オレンジジュース、カステラ、おやつ
          にドライ
マンゴ♪ おいしかったです!  
      18:55 セブ・マクタン国際空港着・バスにて移動
      20:00 ホテル パシフィック・セブ・リゾート着
      21:00 ホテル内のレストランで夕食・バイキング(P550)・飲み物(P60) 〜就寝〜
                                   
[27日] 6:15 起床(時差の計算を忘れ、1時間早く起きてしまう・・・) 
      6:45 朝食 ビュッフェ
      8:30 オプションその1 <体験ダイビング>
          講習⇒プールで練習⇒海に出る(バンカーボートで20分程の島へ)
          魚に餌付けをする($35)・10mほど潜ったら、そこは別世界!   
          水族館でしか見たことのないカラフルな魚たちが目の前に!!
         ☆☆☆ひたすら感動☆☆☆

     12:45 昼食・節約のため、残り物を食す・・・ 
     13:30 セブ本島まで買い物に出かける・ホテルのタクシー(P400)
         'シューマート'という巨大なショッピングモールに驚く・ネグロス島へ行くための航空券
         を買う(P3250)

     19:00 ホテルに戻る・ホテルのタクシー(P400)
     21:00 オプションその2 <ルームマッサージ>
          約1時間かけて全身のマッサージを受ける。ちーちゃんは超気持ちよさそうだが、
          飯沼は指圧?

     22:00 オプションその3 <フルーツ食べ放題> 
          南国のフルーツをとにかく食べまくる。☆バナナの甘さに感動☆ 〜就寝〜
          
[28日] 6:00 起床
      8:10 マクタン空港発(国内線セブ・パシフィックにて)
      8:40 ネグロス島バコロド空港着・ジプニーで市内へ移動(P4)
          観光局で情報集め&ホテル探し・ビジネスイン1泊P630(ツインルーム)
     11:30  ビクトリアスへ出発・バスで移動(P21)・その他(P19)
     13:00  ビクトリアス・ミリング・カンパニー着
          巨大砂糖工場の見学(見た目は、結構ボロい)。砂糖がショベルカーで・・・?
     16:45 バコロドへ帰る・バスで移動(P15)
     18:00 夕食・Joly bee(フィリピンで人気のファーストフード店)
           買い物・クリスマスソングを歌う人々♪  〜就寝〜


[29日] 7:00 起床
      8:00 ホテル出発。セントラルマーケット見物・買い物(P46)
          朝食・マクドナルド(P60)。ジプニーで移動(P4) 
     10:00 オルタトレード財団のオフィスに到着。予想外に歓迎される!
          ☆☆☆みな、とても親切で感動☆☆☆
          フェアトレードや砂糖の生産・土地問題に関するレクチャーを受ける
     13:00  昼食・オルタトレードの方とチキンバーベキュー(P65)
     14:30 フェアトレードの砂糖工場に到着。小さな工場をくまなく見学。ほのぼのしている
     16:00 バコロド博物館へ(P20)。案内してくれた人と友達になる
          ミュージアムショップとショールームでおみやげを買う
     19:00 オルタトレードの人と夕食(プチ合コン?)
          夜のバコロドを体験する。フィリピンのお酒は、少しきつめ・・・
     24:00 ホテル着  〜就寝〜

[30日] 5:00 起床
      7:15 バコロド空港発  
      7:45 マクタン空港着。シューマートで再び買い物
     16:00 ホテル着・ちーちゃんダウン、飯沼一人で散歩、
         夕食・バイキング(P550)・飲み物(P90)  〜就寝〜  

[31日] 7:50 マクタン国際空港発 (フィリピン航空にて)

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<ネグロス島砂糖産業見学レポート>

 ・10/28、10/29、ネグロス島で一番大きな都市であるバコロドに滞在。2つの砂糖精製工場を訪
れた。一つはヴィ
クトリアス・ミリング・カンパニー(VMC)で、一日に10000ポンド(4536キロ)生産す
る、フィリピンで一番大きなシェア
を持つ一番歴史のある会社である。もう一つは、オルター・トレード・
コーポレーション(ATC)というフェアトレードを実
行している会社だ。

@ヴィクトリアス・ミリング・カンパニー

 ・予約もなしに飛び込みで直接現地工場のオフィスに押しかけた。お昼休みであったため少し待た
されたが、シー
ズンオフの2人だけの見学者であるにもかかわらず、親切に案内をしてくれた。工場内
の写真撮影は一切禁止だっ
たが、砂糖精製課程を見学させてもらった。その後、わずかな時間では
あったが、VMCという会社についてと工場
敷地内の説明を頂いた。
 ・見学は、トラックに積まれたさとうきびが山積みにされているところからスタート。それをローラーの
ような機械で
潰していく。軽く潰されたさとうきびがローラーで2段階ぺちゃんこにされ、それからでき
たジュースがタンクにためら
れる。更に2段階ぺちゃんこにされたのが工場のボイラーの燃料として
利用される。大きなタンクの中に溜まってい
るジュースを上から見たが、どろどろで気持ち悪く、変な
においがした。ジュースはその後、熱が加えられ、ろ過さ
れ、肥料と砂糖になるものに分けられる。
肥料が出てきたところを見たが、ベルトコンベアーに乗ってゴボゴボ流さ
れていた。あまり臭くなかっ
た。砂糖の方はその後、機械で濃縮され結晶化される。濃縮後のものを味見させて
貰ったが、もの
すごく濃い黒砂糖の味がした。結晶化された後の砂糖は、ほぼ普段使っている砂糖と変わりなかっ

た。そのあと、精製・漂白し、パッキングするのだが、精製直前の砂糖がまるで土木工事現場の土砂
のように扱われているのには驚いた。この精製前段階の砂糖はVMCの砂糖だけでなく、ヴノルバゲ
ンという砂糖会社などから精製
を請け負っていたりもする。VMCの精製技術が優れている故であると
自慢していた。

 ・ボイラーの煙突は巨大なものが6本、最新のは稼動してまだ間もないそうだが、一番古いのは
1921年から使わ
れている。次に古いのが1928年のもの。まだまだ現役で問題なく働いているそ
うだ。工場は24時間やっていて、従
業員は8時〜16時、16時〜24時、24時〜8時の3シフトで働い
ている。見た感じでは、機械の操縦をしている人が
目立ち、操作盤の前で特にすることも無く暇そ
うにしている様子だっ
た。従事する仕事によって給料にはばらつきが
あるが、日給300ペソが平均。一番少ない人でも
国の法律で決められた最低賃金以上の給料が支払われ、ボー
ナス、社宅、住宅手当、有給休暇
など日本の会社と同じように福利厚生がしっかりしている。仕入れたさとうきびの
代金は小作農に
直接払わず、地主に支払っている。糖分含有量によって値段が決まる。当社はISO9002という国

際品質規格を取得している。



Aオルター・トレード・コーポレーション

 ・こちらも、日本で予約することが出来ず、前日に場所確認の電話を1本入れただけで、直接
現地オフィスに押し
掛けて頼んでみた。だめもとで訪ねてみたのに、とても歓迎され、3人もの
社員が約一日中私達に付き合ってくれ
た。まず、午前中はオフィスにてフィリピンの砂糖産業の
歴史、フィリピン経済、そしてATCのプロジェクトについてレ
クチャーをしてもらった。その後、昼食
を一緒に食べて、車で30分ほど市街地から離れた工場を見学させてもらった。
 ・フィリピンの砂
糖産業はスペインの入植者によって始められたが、後にアメリカの植民地になってから、砂糖生
産に偏った農業政策が進められた。古くから地主―小作農のシステムが存在し、砂糖で得た利
益を地主が取って
しまうため、小作農には利益がまわらず、大きな所得格差と小作農の慢性的な
貧困が続いていた。1980年代の砂
糖の国際価格の暴落により、さとうきび生産者は飢餓に陥り、
世界的に注目を浴びた。こうした事実を受け、ATCと
繋がりのあるATJやJCNCといったNGOが貧
困小作農を助ける活動をはじめた。これらのNGOは地主制に貧困の
原因があるとし、小作農に
土地所有を認めさせる活動を行ってる。

 ・その後の段階をATCが担っているのだ。突然土地を所有することになった小作農達は農作
業器具・機械などの
資本はいっさい持たず、生産ノウハウの知識もなく、ほとんどが小学校4、
5年かそれ以下で止めざる終えない状況
であるため読み書きも十分にできない状況である。
ATCはそんな彼らに小規模の貸付を行い、農業のノウハウ、資
産の蓄積方法・奨励、識字教
育などを提供している。具体的には、SPADE(持続的な生産と地域開発事業),CRAS
P(借り入
れ・返済と貯蓄プログラム), HOE (組合結成)の3つのプログラムを中心に行っている。IFATと
いうフェアト
レードの国際基準に準して、マスコバド糖やバナナを生産している。
 ・ATCの砂糖精製工場は、1898年ドイツ製の小さな煙突1本を使用。手作業でさとうきびを
ローラーに入れて行
き、そこから出たジュース(透明だった)を工場内で加工する。工場内は
衛生的で、私達も工場内に入るのに白い
ゴム長靴を履いて手を洗わなければならなかった。
VMCとは違い、全て手作業での精製が行われていて、作業を
する人は白い帽子、マスク、エ
プロン、長靴などを着用していた。はじめの段階でろ過するのに大きなヘラでかき混
ぜる人が
ひとり、その後は、数段階に分けてろ過され、ぐつぐつと煮詰める鍋に移される。煮詰まったど
ろどろを流
して4〜6人で大きなシャベルでかき混ぜながら乾かす作業をする。それを粒状の
と粉状のに機械で分ける。その
あと、冷房の効いた倉庫に寝かされる。一日に6袋(大きさはお
そらく10キロくらい)が作られる。パッキングは別の
棟で行われ、私達が訪れたときは何も無かっ
たが、ここも小さいが衛生的に保たれていた。日本やドイツ、スイスな
どに出荷したサンプルも
保存されていた。ATCの砂糖は漂白は一切せず、茶色のままで出荷する。白い砂糖にす
るに
は21もの薬品を使わなければならず、マスコバド糖はいくつかの薬品(乾かすのに使うココ
ナッツの粗引き粉な
ど)は使うものの、VMCの砂糖と比べたら断然少ない。環境や体に優しい
オーガニック食品なのだ。

 ・工場の労働者はさとうきび収穫の無い約2ヶ月間はオフになるが、その間も手当てがもらえる。
こちらもシフト制
で、国の法律では8時間労働で185ペソが最低賃金だが、ATCの工場労働者は一
日最低でも200ペソはもらってい
る。時間外労働もちゃんと支払われる。労働組合の代表が会社と3
年に一度は賃金などについて交渉することに
なっている。精製工場で働いている人は66人で、38人
がATCのオフィスで働いている。安全に作業が出来るように
考慮されてあり、労災、医療保険も国の
とは別で提供されている。60日の休みの他に15日間の有給休暇が認めら
れている。―――工場敷
地内の広場では経営者やATC関係者が集まり、コーヒーを片手に仲良く談笑していた。こ
こだけでは
ないが、フィリピンの人は私達と比べると時間的にゆとりをもって生活しているなと感じた。


  ・・・以上が私達が見学してきた概要です。このほかにもいろいろ詳しい話を聞いたりしたので
すが、全てはまと
められませんでした。卒業論文でお伝えできたらと思います。 (文責:大嶺ちひろ)

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★フィリピンを訪れて★

・大学2年次からひたすら韓国にハマっていた私にとって、フィリピンは未知の国だった。
・フィリピンといえば、一般的に、バナナ・エビ・パブ・ジャパユキさん(出稼ぎ労働で日本に来るフィリ
ピン女性)と
いった印象が強いだろう。
・私はとにかく、毎日愛用している「マスコバド糖」の産地・ネグロス島に行きたいという思いから、
この調査旅行を
計画した。

・ネグロス島は、20年ほど前に大きな飢餓に襲われ、世界からは「砂糖と貧困の島」と呼ばれた
そうだ。
そのようなことも、実は、ネグロス島に行くと決めてから知った。
・なぜ、ネグロス島には広大なサトウキビ畑が広がっているのか?飢餓の原因はなんだったの
か?

・サトウキビ労働者は、どんな生活をしているのか?「砂糖」という一次産品の生産は、国際経済
的にどのような状
況にあるのか?。そんな疑問がいくつもいくつも湧いてきた。
・そして見えてきたのは、かつてスペインの植民地であったころの影響、アメリカ企業による新植
民地化政策、単一
作物の生産に依存する危険性、大土地所有制の問題、日本を含めた多国籍
大企業の存在、国際価格の大変動、
政府の政策の失敗、あふれる失業者、最低賃金以下の
生活・・・といった、まさに私たちが勉強している内容とリン
クすることばかりだった。国際経済を
専攻していて、本当に良かったと思った。

・詳しくは卒業論文に書くつもりである。

・今回、「マスコバド糖」という1つのフェアトレード商品をきっかけに、国際経済がより身近で重
要なテーマであるとい
うことを再認識できた。
・また、今まで取り組んできたフェアトレードへの、新たな視点も生まれた。
・私にとって初の発展途上国は、思っていた以上の学びがあり、大変意味のある旅行(調査)
となった。


・予断だが、私は相当タフである。旅行中と旅行前後のハードなスケジュールも、現地の水分も、
夜遊びも、全く問
題なかった。
・意外に、方向音痴でもなかった。見た目によらず(?)、途上国向きかもしれない。
・自分が元気だったばっかりに、ちーちゃんに無理をさせてしまった。これが、今回の唯一の反
省点である。
  (文責:飯沼美和)


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